次のような会話をしたことがありますか?
ポール:僕の代わりに銀行に行ってもらわないといけないんだ。僕の小切手口座はめちゃくちゃになっている。
スーザン:ポール。あなたのために銀行に行く時間はないわ。会議があるし、子どものPTAの会合も今日なのよ。
ポール:でも、僕にはできないんだ。自分で何を間違ったのかわからない。君にこれ面倒をみてもらう必要があるんだ。僕を大切に思うなら、やってくれるだろう?
スーザン:どうしても時間がないのよ。
ポール:(声が大きく高くなり)僕にはできないんだよ。君が銀行に行く必要があるんだ。
さもなければ、口座から残額以上の引き落としをするからな。
もちろんこの筋書では、最終的にはスーザンは銀行に行く以外に選択肢がないように感じました。彼女は口座から残額以上の引き出しをされるという結末を恐れていましたし、ポールは自分では銀行預金を管理できないと信じていました。彼女はポールとこの状況と彼女自身にフラストレーションを感じました。銀行に行けば、ポールにはどうにも銀行の預金を管理する能力がないことを認めた、とポールに伝達することになるとわかっていたからです。
もしあなたの愛する人にポールと似たように振舞ってきた歴史があるならば、あなたにはどんどんフラストレーションがたまってきていることでしょう。たぶんあなたは姉なり息子なりに、その人があなたのところに持ち込み続けている問題への対処法を示そうと試みたことがあるのでしょうが、あなたのコーチではうまくいかないようです。あるいは、あるいは、誰にとっても一人で取り組むには複雑だとわかっている問題であれば、たいていじゃ助ける気持ちがあるでしょう。あなたの愛する人がかっかとして要求する代わりに礼儀正しくお願いしさえすれば、あなたはどうしてあれほど頭の良い人が、全く予期していないときに無力な子どもに変身するように見える のかを解明しようとして、眠れない夜を過ごしているかもしれません。時には、あなたの大切に思っているその人は自分の努力を惜しんで、あなたをいいように使おうとしているだろうかと思い悩んでいるのかもしれません。
ポールのように振舞う人たちは、私たちが積極的受動性と呼ぶ事を行っています。この状態ではあなたの愛する人は受動的な問題解決様式を採用しています。少々複雑な理由から、あなたの愛する人はそこにある問題を解決する能力がないと感じて。それゆえにあなたにその仕事をやってほしいと頼ってきます。BPDをもつ人は、自分自身が努力をしなくてすむようにするため、注目を得るため、責任を放棄するために、これをするのではありません。彼らは、自分の人生をこのようにすることについて、気分よく感じていません。実際、全く反対です。残念なことに、積極的受動性は非常に疎外的です。疑いもなく、スーザンと同様に、あなたが果たすべき自分自身の義務を挙げれば長いリストになるでしょう。スーザンと同様に、あなたはしょっちゅう引き裂かれそうに感じているかもしれませんこの問題を未解決のままにするともっと大きな問題が生じるので、それに伴う好ましくない結末を回避するために、この余分な仕事を強引に詰め込むべきでしょうか?あるいは、あなたは自分の権利を自分で守り、あなたのパートナーが責任をとるように主張するべきでしょうか?、もしあなたの愛する人のリクエストに応えれば、あなたの怒りは強まるかもしれません。そしてあなたの愛する人の恥の感情も。
拒めば、心配に加えて自己嫌悪と罪責感(私は不公平で愛情が足りないだろうか?)で拷問にかけられたかのように感じるかもしれませんし、あなたの愛する人はもっと絶望して、不安を感じるかもしれません。積極的受動性が一つのパターンになっているところでは、何が起きているかを理解することが極めて重要です。さもなければ、この行動はあなたとあなたが大切に思っている人の間に、抜き難いくさびを打ち込んでしまうでしょう。
次回は
「なぜBPDをもつ人は自分自身の問題を解決できないのでしょうか?」を紹介します。
「境界性パーソナリティー障害をもつ人と良い関係を築くコツ」シャーリ・Y・マニング著
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