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「すべて私が悪いのです」


ローラは、夫のスティーブに彼女の悲しみが制御不能であることを理解してほしいと嘆願しながら何時間もすすり泣いていました。彼女は彼にその悲しみを止めるために何かしてほしかったのです。スティーブはローラを助けるために、思いつくすべてのことを試していました。彼はお茶を入れ、慰めを与えて彼女をなだめようとしました。それから、彼は実践モードにシフトして、妻を悲しませているのが何かについて、「徹底究明」を試みました。彼が試すすべてのことがローラをより一層動揺させるように思われ、ほどなく彼は、彼女の気分を良くする方法を突き止めるために手を貸してほしいと彼女に懇願している自分に気づくのでした。完全に消耗しきって、ローラはやっとのことで顔を洗うために部屋を出ました。戻ってきたとき、彼女の涙は乾いていました。彼女が話し出したとき、その声は自分自身をコントロールするために必要な努力のせいで震えていました。「私はこんな風に感じるべきではないわ。それに今、あなたを傷つけている。私が一番愛している人を」と彼女は言いました。「私は大丈夫。もうこれ以上私のことは一瞬たりとも心配しないで。私はひどい人間で、あなたを夫に持つ資格なんてないの。これ以上、この件について話すことはないわ。もう大丈夫だから」と。


何よりも、スティーブはローラを信じたいと思いました。けれども、長年そうであったように、彼には経験から大丈夫ではないこと、このシーンが繰り返されるであろうことがわかっていました。彼はあとどのくらい我慢できるのか、自信がありませんでした。時々、彼はローラに、彼女はうそをついていると叫びたくなりました。彼女はわがままだ、と。彼女が狂った妄想の世界に住んでいるのだ、と。二回ほど、彼は実際に自分の気持ちを口走ってしまいました。その結果たるや、散々でした。一回はローラがジンをボトル半分飲み、車に乗り込みました。彼女が走り去る前に制止できたのは、全くの幸運によるものでした。もう一回は、彼女は電話を手にして、家にいる上司にかけ、自分は無能で現実から遊離しているので仕事をやめると言いました。


事実、ローラの気分と行動がとても急速に、予測不可能に変化するように思われるため、スティーブは自分にはコントロールできないかのように感じ、そのせいで自分は彼女がひどい気分になるのを止める役には立たないと感じてもいます。彼には彼女が気分悪く感じるのを直接コントロールできないというのは真実です。しかしながら、ローラが変われないというのは真実ではありません。けれども、彼女は助けを必要としています。彼女は内面で聞き続けている自己批判の声を消すために、外側にいる人々に助けてもらう必要があるのです。


BPDをもつ人は、しばしば自分は無価値で、何ものにも値せず、何をやっても駄目だと言い張り、自分自身を鞭打つ時期を経験します。この行動パターンは自己非承認と呼ばれ、学習された行動です。私たち全員が行動を学習します。もしあなたが「そんなふうに泣くのはやめろ。さもないと、もっと泣かせてやるぞ」と言われるような家庭で育ったのであれば、泣きたい気持ちを押し殺すことを学ぶでしょう。泣きたくなるような状況で、あなたは自動的に泣くことをやめるでしょう。自己非承認のケースでは、ローラのようなBPDをもつ人は、泣くようなことは何もないのだ、ただ泣きやむべきなのだと自分自身に言い聞かせて、泣かないようにするでしょう。


感情の渦をボーダーライン行動のスペクトラムの一方の端に存在するものと考えると、自己非承認は反対の端にあります。しかしながら、これら二つのパターンは同一人物の中でとてもよく現れるのです。感情の上に感情が蓄積していくと、あなたの愛する人は感情の渦の中に引き込まれるでしょうが、その人が無防備であるほど、感情は実に圧倒的なものとなり、その後、その人は文字通りそれを我慢できなくなって、自分の経験の非承認へと動いていくのです。突如として、あれほど強かった感情が関連性を失うか、存在しなくなります。あるいは、感情の原因となった問題が簡単に解決可能になります。時として、BPDをもつ人は、正確に伝達できないせいで、自分の問題を矮小化して見せます。あるいは、他人を守るために問題を矮小化するかもしれません。これは見せかけのコンピテンスと呼ばれる行動です。


十分な期間、自己を承認しないでいると、極端な感情が戻ってくるでしょう。絶望感と怒りは多くの場合、自己非承認の結果です。BPDをもつ人は、自分は無能であり、生きるに値しないと決めてしまい、良くなる望みがないように感じます。怒りは、自分は無価値で無能だとして自分自身に向けられることもあれば、他人に向けられることもあります。これらの感情が蓄積するにつれて、その人は感情的脆弱性へと戻っていきます。ひとたび、あなたの愛する人がこの感情的脆弱性が高まった状態に入ったなら、それはまるで振り子の上に乗っているようなもので、その勢いをそぐことは困難です。破壊的なほどに強烈な感情から、否定する必死の試みへと揺れ、そして非常に強い感情に戻るという具合に揺れ続けます。



次回は「すべて私が悪いのです」の続きをご紹介します。


「境界性パーソナリティ障害をもつ人と良い関係を築くコツ」 シャーリ・Y・マニング著

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