ティファニーは15歳の高校生です。彼女の学校カウンセラーが、彼女が自分の身体に火傷を負わせていたことを知って紹介してきました。ティファニーと両親は、一緒にセッションに来ました。誰でも初めは多少不安になり、緊張するものです。次に紹介する会話は、私たちがあって20分ほどして生じたものです。
「なるほど。ではあなたはここ二年程、自分が学校でうまくいきそうにないと考えたときに生じる恐ろしい感情を何とかしようとして、自分に火傷を負わせてきた、と。そういうことかな?」
私は尋ねました。
「はい、私がそういうことをするのはその時だけです。でも時々、それが頻繁になります」
ティファニーは答えました。
「最近まで誰もこのことを知らなかったし、これでうまくいってたんです。私には本当に自分が自傷をやめたいのかどうか、よくわかりません。先生にはおわかりでしょうけど」
「私たちは、娘がこんなことをしているなんて知りませんでした!このことについて話し合おうとしましたが、うまくいきません。ただ娘と言い争いになるだけなのです」
ティファニーの母親が訴えました。
「自傷は、お子さんにもご両親にも、非常に話題にしづらいことですね」
私は優しく言いました。
「このセッションが終わるまでには、自傷が持つ意味や、それにどのようにして取り組んでいくのかについて、皆さんにもっとよく理解していただきたいと思います」
それから私はティファニーの方を向き、尋ねました。
「自傷をすると、気持ちが落ち着くんだよね?」
「ええ。自傷の回数はもっと減らす必要があると思います。そうすれば問題ではなくなるでしょうし。特に私が自傷したことを黙っていれば」
「いい加減にしなさい、ティファニー!」
ティファニーの父親が即座に口を挟みました。
「とんでもない、狂ってる」
「ご両親の心配もティファニーの行動がどれほど異様に見えるかということも、私はよく理解していますが」
私は言いました。
「しかしある意味では、自傷することには大変意義があるのです」
私は再びティファニーの方を向きました。
「それで、あなたは高校卒業したら何をしたいと考えているのですか?」
私は尋ねました。
「大学に行きたいんです。こんなこと言ったら先生がどう思うかはわかっていますけども、私、児童心理士になりたいの。私、自分はそれに向いているかもしれないって思うんです」
彼女は告白しました。
「それは素晴らしい。私たちは、子どもの問題に取り組みたいという人を本当に必要としているのですよ…。でもちょっと待って、それじゃ自分に火傷を負わせることについてはどうなんだろうね? 心理士になるということは、大学に行き、その後大学院へ進まなきゃならない。そして、学校という環境はそれこそ、あなたにとって大きなストレスになるように思います。まあ、その問題はちょっと置いておくとしても、子どもたちを治療しているときにまだ自分に火傷を負わせていたら、どうでしょう?」
私は尋ねました。
「それは問題だと思いませんか?」
「そんなずっと先のこと、今まで考えていませんでした。たぶん私、それまでには自傷をやめられるだろうと考えていたと思う。その時もまだ自傷をしていたらそれは大問題ですよね。そんな状態で子どもたちを助けようというのはインチキのように感じられると思います」
ティファニーは言いました。
「でも、私はもう少し大人になったらやめられると思うわ」
「実際には、適切な治療を受けないと自傷は大人になっても続くことが多いのですよ。あなたは自分がどう変わったら、自傷をやめられると思いますか?」
私は尋ねました。
「わかりません――たぶん、ストレスへの対処がもっとうまくなればいいんじゃないかしら」
「どうしたらそうできるようになると思う?」
私は尋ねました。
「他の人々は自分を傷つけずに、うまくストレスに対処しています。私にもできると思います」
ティファニーは答えました。
「そう、その通り」
私は言いました。
「でも、たぶんあなたは、そういうストレスにどうやって耐えたらいいかを知るために、少し援助がいるように思います。どうかな、興味がありますか?」
「はい」
彼女は言いました。
「学校へ行って自分のやりたいことをするのに、こんなことに邪魔されたくありません」
「素晴らしい」
私は答えました。
「こういった行動を変えることは大変な取り組みになるでしょうが、きっと一緒に成し遂げられますよ」
次回は「皆が一緒に参加する」を紹介します。
「自傷行為救出ガイドブック ―弁証法的行動療法に基づく援助―」 マイケル・ホランダー著
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