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マシュー:問題がどのように発生したかを理解する

自傷する子どもたちは、たいてい自分を弱い、欠陥がある、あるいはその両方であると考えています。もし自分がもっと強かったら、あるいはもっと意志の力を持っていたら、自分の感情にそれほど圧倒されないだろうと信じているのです。私は、自傷行為には何ら悪いところはないと考えている子どもに何人かあったことがあります。自傷は自分の気分を改善してくれるし、他の誰も傷つけないから、と彼らは言うのです。このような持論はたいてい、その子どもが自傷をやめることをあきらめてしまったことから生じます。

  また、子どもが自分の精神的な面をうまく管理できないと、その結果として貧困な自己評価、抑うつ気分、壊れやすいアイデンティティ、及び衝動的行動を起こす傾向が見られることがあります。自傷をするのは自分のパーソナリティに何らかの障害があるからだ、という考えを捨てるように子どもを説得するのは、潮の流れが入ってこないように砂で波を押すのと同じくらい、甲斐のないことです。その代わりに、その行動の理由を別の形、その子どもの経験と共鳴するような形で説明します。DBTで用いる代替策は、生物社会学的理論です。次に例に挙げるマシューに対してもそうでしたが、この理論を子どもと親が同席したセッションの中で説明するようにしています。全員にこの取り組みに参加してもらうためです。


「僕だって、やめようと本当に努力したんです。でも両親は、もし僕に本当にその気があれば、ちゃんとやめるだろうと言います。僕は弱虫だからできないんだと父が考えていることは、僕にもわかっています」

マシューは嘆きました。

「たぶん父の言う通りなんでしょう。僕の努力が十分じゃなかったことは明らかです。だって僕はまだ自傷行為を続けているんだから」

「君もお父さんと同様、問題は、自分の意志の力か、自制心が欠けていることであるとかんがえることがときおりあるんだね」

私は答えました。

「その考え方は、大間違いだよ。そのような考え方では、君はずっと自分自身をみじめに感じ続けることになるよ。君は自分がどれほど一生懸命に学校の勉強や、課外活動を頑張っているかということを私に話してくれたね。その話を聞いて、私は、君が意志の力や自制心が足りないとは思わなかった」

私は付け加えました。

「もっと正確な説明ができるのではないかと思うのだけれど。それを聞いてみたいと思うかい?」

「はあ」

彼は、気が乗らないように答えました。

「まず最初に、三つの質問をさせてほしいんだ。君は自分自身について、君が知っている他の人々と比較して考えたとき、自分はより敏感であると思う?

私は尋ねました。

「絶対そうです!」

彼は即座に答えました。

「わかった。では、君は自分自身について考えるとき、自分の感情に非常に速く反応していることに気づいている? つまり、君は自分の感情をじっくり考える必要がないということ――君はほとんど、即座に答えが出るということだ」

「はい、確かに僕の場合はその通りだと思います。時々僕は、自分が何を感じているのかわからないときがあります。まさに感情に圧倒されてしまうんです」

「なるほど。では君は、感情的に高ぶったとき、冷静になるのに他の人々よりも時間が長くかかると思う?」

私は尋ねました。

「まったくその通りです。父はいつも僕に、もういい加減にしろ、と言います。でもぼくにとって、それはそんなに簡単なことじゃないんです」

マシューは言いました。

「君と君のお父さんとでは感情の経験の仕方が大きく異なっているということを理解するのに、お父さんは苦労しているんじゃないだろうか。そこで、私なりに君のことを精一杯推測してみたのだけど、君は私たちが、『感情的に過敏な人』と呼ぶタイプの人じゃないかと思うんだ。つまり、君は生まれつき、普通の人々よりも物事をより強く、速く感じるように組み込まれているんだ。それ自体は心理学的に問題ではない。世界には敏感な人々がたくさんいるし、そのような人々は、しばしば芸術家や作家だったりする。精神科医ということさえあるよ。でも、自分の持つ強力な感情システムをうまく管理するスキルが未発達な場合には、問題となる。その管理スキルに欠けていると、私たちは感情的に脆弱になってしまうんだ。君が君のお父さんについて話してくれたことから判断すると、君のお父さんは、物事を論理的で理性的な側面に基づいて行動するタイプの人のようだね。一方君は、感情面により関心があるのだろう。どうかな、私は正しく理解しているかい?」

私は尋ねました。

「確かに。父はコンピュータ関連の科学者ですが、僕は詩人になりたいと思っています。僕は、僕と父はどうにもウマが合わないと思うことが時々あります。」

マシューは答えました。

「君の感じ方を君のお父さんが受け容れるのに苦労したとしても、私は驚かない。お父さんは君に、そのように感じるのをやめるよう説得しようとしたかもしれない。あるいは、君は過剰に反応しているとほのめかしたこともあったかもしれない。少なくともお父さんはきっと、君の感情的経験を承認するのに苦労しただろうね。その状況に君のお母さんがどのように合わせているのかはわからない、私たちはまだ君のお母さんのことはあまり話していないからね。でも、君に対するお母さんの反応について考えることも有効だと思う。きっと君のご両親も、自分たちにできる最善のことをしてこられたのだろう。ただ君は、自分の強力な感情システムをうまく管理する方法を学ぶよう支えるポイントを、様々な理由から見落としてしまっただけなんだ」



次回は「デイビッド:相性の一致」を紹介します。


「自傷行為救出ガイドブック ―弁証法的行動療法に基づく援助―」 マイケル・ホランダー著


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