感情を調整する
自傷する子どもたちは自分の感情的苦悩を調整するスキルを持っていません。DBTにおいて、彼らは、感情を混乱させる沸点の温度を引き下げ、ポジティブな感情的経験を増やすのに役立つ具体的なテクニックを学びます。感情調整スキルは基本的に三つの方向から感情制御不全に向けて取り組みます。第一に、子どもたちは生活の中で、感情がコミュニケーションの源として、自己承認の側面として、そして行動の前身として果たす価値を教わります。第二に、彼らは、ネガティブな感情に対して脆弱になる物事のあり方と、自分の生活をよりうまく管理することによってそれらに圧倒されずに済む方法を学びます。第三に、自分の感じ方を変えるのに役立つ、いくつかの具体的なスキルを学びます。
苦悩に耐える
人生にはどうにもならない問題があることは、誰でも知っています。それらは交通渋滞に巻き込まれるといった程度のものもあれば、大切な人の死といった胸が張り裂けんばかりのものもあります。人生の出来事の中には、何であれ、苦痛なことがあります。したがって私たちは、これらの苦痛な時期を通り抜けるのに役立つスキルを必要とします。苦痛な時期に自傷する子どもたちは、しばしば衝動的行動あるいは対人的に有効でないことをすることで、この状況をさらに悪化させます。私たちがそうした瞬間を切り抜けるのをたすけるDBTのスキルは、苦悩耐性スキルです。これは二つのカテゴリーに分類されます。
第一のカテゴリーは、私たちが自分の現在の状況を受け容れるのに必要なスキルです。事態をそのままに受け容れるというのは、その状況に屈するということでも、それを好きになるということでもありません。それはただ、事態がその瞬間に、あるがままに起こっていることを認めるという意味です。それと戦うのではありません。この一連のスキルは「現実受容の基本原則」と呼ばれます。
第二のカテゴリーは「危機生存戦略」です。これは私たちがその瞬間をうまくやり過ごせるよう助けることを目指すものであり、問題解決に向けたものではありません。一時的に私たちの苦悩を減らすか、または私たちの気持ちを苦悩から逸らすためのスキルを提供するだけです。危機生存戦略には、風呂に入るといったように自分を慰めることをするか、あるいはセーターを編むことに没頭するといったように気持ちを紛らわせることが含まれます。苦悩耐性スキルは、自傷を行う子どもたちのことで頭を悩ませる中、親も学ぶべき最も重要な一連のスキルの一つであると考えます。
次回は「DBTは『これまでの治療と同じ』ではない」を紹介します。
「自傷行為 救出ガイドブック ―弁証法的行動療法に基づく援助―」 マイケル・ホランダー著
Comments