対人関係を有効に保つ
自傷を行う十代の子どもは、対人関係に困難を抱えていることがしばしばです。彼らは、何とかうまく調和しようと懸命に努めることもありますが、実は、自分が他人とうまくやっていけるとは全く信じていません。彼らは拒絶を感じることにしばしば非常に神経質です。そのため、強すぎるほどしっかり対人関係にしがみつくことで、拒絶とそれに伴う見捨てられ感から自分を守ります。驚くまでもなく、これは逆効果となり、彼らは友人たちから「うっとうしい」と思われてしまうことがしばしばあります。中には、自分にはそれに取り組むためのスキルが全くないため、友人を作ることを考えただけで気力がなえてしまう子どももいます。悲しいことに、その結果、彼らはしばしば社会的に取り残されてしまうか、せいぜい青年期の子ども社会に、ほんのわずか仲間入りする程度となってしまいます。
彼が対人関係有効性スキルを学べるよう支援することで彼らは、対人的状況で自分が何を目指しているのかを理解できるようになります。その点でカギとなる質問は、「この相互関係のためにあなたが優先させることは何ですか?」というものです。続く質問には次のものが含まれます:「あなたは何を求めていますか?」、「あなたは対人関係を修復しようとしていますか?」、「あなたが自尊心を手放さないように役立つよう境界設定をしていますか?」。
これらの質問に答えたら、青年期の子どもは対人関係有効性スキルの使い方を学び、それを治療の中で練習し、その後、実生活の中でそれらを応用するように教えられます。こうして必要なものを身に着けると、彼らはしばしば、初めて、それまで慣れていた感情的緊張を感じることなく、対人関係を有効に保つことができるようになるのです。
16歳のブランドンは、母親との一番最近の口論について話してくれました。以前は、彼と母親は頻繁に言い争うばかりで一向に解決しませんでした。ブランドンはどうしても謝ろうとしませんでしたし、母親はただ絶望し腹を立てているだけでした。その結果、親子間の緊張は何日も続くことがあり、彼の自傷の一因となることが多かったのです。
「土曜日に母と大喧嘩をしましたが、今回はいつもと違っていました」
ブランドンは私に言いました。
「出て行ってしまう代わりに、僕は自分の新しいスキルを活用し、母の視点を理解してみようとしたんです。僕は謝りました。そうしたら、本当にうまくいきました!」
次回は「感情を調整する」を紹介します。
「自傷行為 救出ガイドブック ―弁証法的行動療法に基づく援助―」 マイケル・ホランダー著
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