top of page

状況をリセットする―子どもの感情統制を助ける方法



ジェニーの母親は、夫を玄関先で出迎えました。

「ジェニーが洗面所に1時間半以上もいるの。あの子、またミケーラといっしょに出かけたのよ、で、帰ってきたとき、あの目つきをしていたの。あの子、あそこでまた自傷しているんじゃないかしら」

「まったく!あの子があのミケーラのガキと出かけるといつもこうだ。俺が行く、必要ならドアを壊して中に入ってやる!」

ジェニーの父親は怒鳴りました。

「あの子は、今すぐにあの狂った行動をやめなくてはならんのだ!」


親として、私たちは、子どもたちの助けになるよう社会的に期待されているだけでなく、そもそも生まれつきにそう在るように組み込まれているのです。子どもが私たち親の助けを受け入れてくれるとき、私たちは有能感といささかの幸福感を得られるものです。それについては何ら疑いがないでしょう。実際のところ、わが子の成功は私たち親に、自分は素晴らしい親であると実感する後押しをしてくれますが、わが子が問題を抱えると、私たちは親としての自分の能力に疑いを抱いてしまいます。私たちが自分の能力を認め、自分は親としてよくやっているという実感を得るための方法の一つは、わが子が学業や音楽、芸術、スポーツなどでよい成績をとることです。私たちは、これが本当はわが子の成果であることを承知している一方で、たとえそれが単なる励まし程度であったとしても、自分が何かしらその成果に関係していることを知っています。


必ずしもいつもそうとは限りませんが、しばしば私たちは、わが子がもっと幼かったころには自分たちはもっとうまくやっていたと感じます。思春期になると、どうしたらわが子の力になれるのかを知るのは難しくなります。ましてや子どもが精神的に問題を抱えている場合は、事態はいっそう難しくなります。大丈夫だと言って安心させる、あるいは親が直接介入して問題解決をするといった、過去に有効だった方法も今となってはかえって子どもの怒りを買うか、さもなければ涙ながらに拒否されるはめになることが多いのです。次に挙げる、メアリーの7歳のときと14歳の時との違いを読むことで意図をおわかりいただけるでしょう。


7歳の幼いメアリーが、、しかめっ面で学校から帰宅します。瞳からは涙があふれ、唇がかすかに震えています。

「メアリー」

あなたは呼びかけます。

「どうしたの?」

「ジェイミーがもう私のお友達でいたくないって。私が自分のカップケーキをジェイミーに分けてあげないからだって」

涙が滝のように頬を流れ落ちる中、彼女はあなたに言いました。

「ほら、心配しないで。あなたとジェイミーはもうずっと長い間お友達だったもの、きっと仲直りできるわ(安心させる)。ママにいい考えがあるわ。そうだ、二人でもういくつかカップケーキを作って、今日の午後、ジェイミーの家へ何個か持っていってあげたらどうかしら?」

あなたは提案します(問題解決)。

メアリーの顔に笑顔が浮かびます。

「ママは世界一のママだわ!」

彼女はあなたに言います。



大きくなった14歳のメアリーが、しかめっ面で帰宅します。瞳からは涙があふれ、唇がかすかに震えています。

「メアリー」

あなたは呼びかけます。

「どうしたの?」

「何でもないわよ!」

彼女は怒り、あなたに食ってかかります。

「ちょっと待って、私はただあなたの力になろうとしているだけなのよ、何か会ったんでしょう?」

頭に血が上がってき始めている中、あなたは言い返します。

「問題はジェイミーが最悪だっていうことよ、わかった?もう私を一人にしといてよ」

彼女は投げつけるようにあなたに言い返します。

「メアリーあなたとジェイミーはもうずっと長い間お友達だったのだもの、きっと仲直りできるわ(安心させる)」

あなたは極めて慎重に答えます。

「ジェイミーとちゃんと話をすれば、きっとうまくいくと思うわ(求められていない問題解決)」

「ジェイミーなんか、めちゃくちゃにしてやる!ママは大馬鹿よ!」

メアリーはそう叫ぶと、自分の部屋へものすごい勢いで走って行ってしまいます。



同じ問題、同じ解決方法、―――しかし年齢が異なると、その結果は大きく異なります。感情的混乱に直面すると、親は他の人々と同様、過去にうまくいった一連の行動スキルをよりどころとするのが普通です。一連の新しい子育てのスキルを発達させるには、ある程度の時間と異なる視点、そして練習が必要です。しかもスキルというものは、危機的で精神的ストレスの大きい場面ではなく、比較的落ち着いた状況で最もよく獲得されるものです。したがって、感情統制に困難を抱えた我が子に対してどうしたらいいのかわからなくなってしまったとしても驚くことではありません。皆さんは、以前にはうまくいったものの、現在ではそれが通用しない方法を繰り返すことになってしまうでしょう。



次回は「何をしたらよいのか、それはなぜか」をご紹介します。


「自傷行為 救出ガイドブック ―弁証法的行動療法に基づく援助―」マイケル・ホランダー著

 
 
 

コメント


この投稿へのコメントは利用できなくなりました。詳細はサイト所有者にお問い合わせください。
bottom of page