治療の四本柱
うつ病治療の四本柱は「休養」「環境調整」「薬物治療」「精神療法」です。
休養・環境調整
十分な休養をとって心と体を休ませることはうつ病治療の第一歩です。職場や学校、家庭などで受けるストレスを軽減できるように、例えば職場での配置転換や残業時間の短縮、家事の分担などをお願いしてみましょう。
薬物治療
うつ病薬物治療の基本となるのが「抗うつ薬」です。そのほかにも患者さんの症状に合わせて「抗不安薬」「睡眠導入薬」「気分安定薬」などが使用されます。
・抗うつ薬
現在、日本で広く用いられている代表的な抗うつ薬はSSRI、SNRI、Na SSAの3種類で新規抗うつ薬と呼ばれ、古くからうつ病治療に用いられてきた三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬よりも副作用が少ないのが特徴です。
うつ病の治療薬は効果が現れるまでに2週間〜1ヶ月程度かかることもありますので、焦らずに主治医の指示に従って服薬を継続しましょう。
・抗不安薬
抗不安薬はうつ症状の不安や緊張を軽減させる効果のある薬で、主にエンゾジアゼビン系の抗不安薬が一般的です。
・睡眠導入薬
睡眠導入薬(睡眠薬)は、うつ症状の睡眠障害(なかなか寝つけない、夜中や早朝に目が覚めてしまう)を改善する目的で、主にベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系の睡眠導入薬が使用されています。
睡眠導入薬は「怖い」「中毒になる」と考えて飲みたがらない方がいますが、現在使用されているものは安全性の高い薬です。睡眠障害がある場合には主治医の指示に従って、正しく睡眠導入薬を使用しましょう。
・気分安定薬
おもに双極性障害の治療に用いられる薬ですが、うつ病治療にも使用されることがあります。
薬物治療で注意したい4つのポイント
1、規則正しく服薬しましょう
2指示された通りに飲みましょう
3、気長に服薬を続けましょう
4、自分の判断で服薬を中止しないようにしましょう
必ず主治医の指示に従いましょう。副作用など気になる症状があるときにもすぐに主治医に相談しましょう。
精神療法
精神療法は、うつ病の原因となったストレスを振り返って対処法を学び、調子の良い状態の維持と再発を防ぐ目的で行われます。薬物治療とあわせて行うことで効果を発揮します。
一般的なものに「認知行動療法」と「対人関係療法」があります。
・認知行動療法
何か困ったことにぶつかったときに起こりがちな悲観的な物事の捉え方や考え方の癖を改善することで、マイナス思考がうつ状態を悪化させる悪循環を断ち切る方法を学びます。
・対人関係療法
うつ病を引き起こす要因となった対人関係の問題を解消することで、ストレスを軽減させる目的で行われます。対人関係が改善されると周囲の人にも受け入れられやすくなるので、回復に向けたサポートが受けやすくなるというメリットもあります。
その他の治療法
うつ病の治療には他にも下記のような様々な治療法があります。主治医とあなたに合った治療法について相談してみましょう。
・運動療法
心臓に負担にならない程度の有酸素運動を行う治療。薬物治療と組み合わせて行う。
・高照度光療法
非常に明るい光を一日1〜2時間程度照射する治療法。
・修正型電気けいれん療法
全身麻酔と筋肉のけいれんを抑える薬を使用して、脳に数秒間の電気刺激を与える治療法。重篤な場合や深刻な焦燥感、強い希死念慮がある場合、副作用などの理由で薬物治療が難しい場合などに用いられる。
・経頭蓋磁気刺激法
特殊な機械で磁場を発生させ、そこで生じた誘導電流で神経細胞を刺激する方法。
次回は「回復までの道のり」をご紹介します。
「患者さんとご家族のためのうつ病ABC」より
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