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DBTは『これまでの治療と同じ』ではない

  DBTの効果を立証した最初の研究は1990年代初期に発表されました。治療プロトコルとして、一年間の個人心理療法と一年間のグループによるスキル訓練が設定されました。この研究はDBTと、私的なセラピストや精神保健センターでのより長期にわたる対話療法を受ける「これまで通りの治療」とを比較検証しました。研究者たちは、特に、これまで通りの治療を受けた人々と比較して、DBTを受けている人々は、意図的な自傷や自殺企図の比率がより低く、精神病院の入院日数も少なくないことを明らかにしました。   これは特に青年期の子どもを治療するよう計画されたものではありませんでしたが、1990年代半ばに向けてアリス・ミラー、ジル・レイサス、そしてマーシャ・リネハンは、自殺傾向がある、または自傷する、あるいはその他様々な形態の危険行為を行う青年期の子どもを対象とした改造版DBTを開発しました。青年期の子どもは個人DBTで週に1回面接を受け、さらに親または保護者と一緒に週に1回、複数家族スキルグループに参加します。標準DBTでは一年間だった治療期間はわずか12週間へと短縮され、スキルグループには常に親か保護者が同伴することになりました。   1998年に私たちは、DBTが最善の治療であると思われる青年期の子どもを対象に、マサチューセッツ州ケンブリッジの診察室で外来患者用集中的プログラムを開始しました。これらの青年期の子どもの多くは、自傷するか、あるいは自殺念慮、うつ状態、および摂食障害に苦しんでいるかのどちらか、もしくはその両方でした。彼らは週に五日、一日4時間のグループ治療に参加し、その時間にDBTスキルの全カリキュラムを教えられました。彼らはまた、DBTセラピストと週に1回か2回、個人治療しました。親は、子どものセラピストと週に1回面接することと、DBTスキルグループへの参加を通してプログラムに積極的にかかわりました。   私たちのプログラムで成功を得た子どもたちは、2,3週間という短期間で「治癒」したわけではありませんでした。しかしながら、彼らは実際に顕著な進歩を遂げたのです。要約すると、青年期の子どもの抑うつ状態、不安、怒り、およびそのほかの心理的苦悩の経験が顕著に低下し、正常域内になりました。加えて、境界性パーソナリティー障害の症状と自傷的思考および行動が顕著な改善を示し、さらに感情調整スキル、自宅や社会的状況での機能の発達にも同様の改善が見られました。   私の経験上、DBTによって子どもは心理的苦痛と抑うつが全体的に減少するだけでなく、3か月から6か月の間に自傷行動も劇的に減らすことができます。多くの場合、彼らは週1回の個人セッションとスキルグループセッションをさらに6か月から1年間続けます。追加治療は、彼らが自分の獲得したことを保持し、より標準的な10代の子どもらしい生活を自力で維持するのに役立ちます。   中には、DBTが役に立たない子どもたちも、確かにいます。   それは私が力量不足だったからか、あるいは子どもたちがあまりにも強固に不利な状況をもたらす人生経験を有していたからかのどちらかが原因です。しかし大部分において私が個人治療で面接してきたか、あるいは私たちのプログラムを最後までやり通してDBTスキルを学び、それらを日常生活の中で練習し、自傷の引き金となることを理解しようと取り組んだ何百人もの子供たちは、ポジティブな結果を示しています。私がセラピスト冥利に尽きると感じる瞬間の一つは、子どもたちが時折、数か月か数年後に訪ねてきて、自分の現状を私に報告してくれる時です。ここ10年にわたり、彼らのほとんどは自傷をやめています――しかも他のどの治療法よりも短期間で、です。 次回は「DBTセラピストの見つけ方」を紹介します。 「自傷行為 救出ガイドブック ―弁証法的行動療法に基づく援助―」 マイケル・ホランダー著


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