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ひどい事態だ。でも心配しないで。私は対処できています。その②

以前にBPDが二人の関係の中であなたをひどく道に迷ったように感じさせると述べました。あなたは様々な形で迷子になります。見せかけのコンピテンスはあなたを途方にくれさせる大きな要因になります。あなたは愛する人の能力を知っていると考えていましたが、今やそれはただの夢だったのかと不思議に思います。大学の授業ではあれほど容易に成果を挙げられるのに、家族内では大人として機能するように見えないこの人は、いったい何者なのでしょう?あなたの愛する人は、ほんの一時間前には微笑みながら、口論した友人には自分が悪いと言って謝罪すると言い、大切な友人なので仲良くすると私に話してくれました。それなのに、今では壊れかけた関係への絶望感から、何か劇的なことをすると脅かしているというのは、いったいどういうわけなのでしょうか?

 マットと同じように、リンダは職場では非常に複雑で重要な対人関係問題に対処する能力を繰り返し示しています。彼女はチームを統率していて、メンバーは彼女と一緒にとてもうまく動いています。しかしながら、自宅にいるときは不安で憂鬱になり、どうということもない家事をしてくれと夫に頼むこともできないようです。夫がゴミ出し、猫の餌やり、芝生への水やりといったことをしようといないので、彼女の苛立ちはどんどんたまっていきます。職場ではいとも簡単に対処できることが、家庭では不可能に思われるのです。

 ジョルダンは、母親のキッチンに座っています。母親に授業の間にボーイフレンドが別の女の子にキスしているのを見て、それから二人がジョルダンに気づき、彼女に向って笑いかけたと話しています。彼女は1600年代に誰かが書いた退屈なスピーチを読んでいるかのように、顔の表情や抑揚なしに一本調子でその場面を描写します。言葉とは裏腹に、彼女は母親に語っている内容に衝撃を受けているようには見えません。そこで母親の反応は最小限のものとなり、娘の語っている話の中身よりも娘の声の調子に合わせたものとなります。その日もっと遅い時間になって、母親はもう一人の娘からジョルダンが実際にはボロボロになっていると聞きます。ジョルダンはワインを1本がぶ飲みして姉に電話し、母親のことを浮気者のボーイフレンドや「あの泥棒猫」と同じくらい残酷だと怒鳴ります。ジョルダンは、自分が自らのショック、傷心、屈辱をはっきり伝達したものと信じているのです。母親は、ジョルダンがそれほどひどい気持ちであったのな、なぜあれほど冷静に見えたのかわからず、その出来事が彼女にとっていかに悲劇的であったのか、なでもっと正確に伝達してくれなかったのかも理解できません。

 見せかけのコンピテンスは多数の異なる形で出現しますし、それらをすべて認識すれば最善の反応の仕方を考えだすことに役立つでしょう。見せかけのコンピテンスには、幾つかの現象が有り得ます。一つには、般化の問題があるかもしれません。つまりあなたは、あなたの愛する人が一つの文脈ではある行動ができるのに、他の文脈ではできないことに当惑するかもしれません。二つ目には、あなたの愛する人が本当はもっていもいない能力をもっているかのようにその人を扱って、知らず知らずのうちに事態をややこしくしているかもしれません。第三に、あなたの愛する人は「感情を覆い隠している」かもしれず、そのせいであなたは愛する人が実際には爆発寸前であるのに、大丈夫なのだと考えてしまうことがあります。最後に、あなたの愛する人はあなたがいるときには明るくなり、あなたとの接触が終わると潰れてしまうということなのかもしれません。

次回はこれら一つ一つをもっと詳しく見ていきましょう。


次回は「あなたの愛する人は何かを行う能力を般化することができますか?」を扱います。


「境界性パーソナリティー障害をもつ人と良い関係を築くコツ」シャーリ・Y・マニング著


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