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デイビッド:相性の一致(続き)


「わかりました。では、私が君に何をしてあげられるか、そして私は君に何をしてもらいたいのかをお話ししましょう。いいですか? 私は自分のベストを尽くして自分の仕事をしてゆきます。君と定期的にセッションを持ち、君が自分の目標を達成するのを助けるために私ができることを何でもします。私はうまくやれるでしょうが、時には助けが必要なときもあります。私がセラピストチームのいちいんであること、そのチームは毎週集まって各自が担当している患者さんについて話し合うことを知っておいてください。私は自分が行き詰っていると思う場合、あるいは私は役に立っていないと君が考えた場合には、そのチームに相談をします。そのことについてちゃんとわかってもらえたかな?  では、次に、君に何を期待するかを説明することにします。

第一に、君は個人治療とグループ療法の両方に六か月間出席する必要があります。それくらいの長さが、私たちがすべきことを終えるのにちょうどよい期間なのです。

第二に、DBTのスキルを学んだら、それらを実生活の中で練習することが大切なのです。ただスキルを学ぶだけでは、鍵盤には触らずに、講義だけでピアノの弾き方を習うようなものだからね。

私と一緒に治療をやっていくために、君は自傷をやめることに自分の意志をもって取り組む必要があります。また、毎日ダイアリーカードに記入し、それをセッションの時に持ってきてください。最後に、もし君が、嫌な気分になっていくつかスキルを試してみて、それでもまだ自傷することが頭を離れないという場合には、いつでも電話で私を呼び出してください」

「先生に電話するんですか?」

デイビッドは尋ねました。

「一週間、毎日24時間、いつでもということですか?」

「そう、いつでもかまいません、昼でも夜でも」

私は答えました。

「そうする上で障害となりそうなものは何でしょう?」

私は尋ねました。

「わかりません。僕は自分のことで真夜中に先生を煩わせたくありません。それにともかく、僕は対処の仕方を学ぶ必要があるんです」

「確かに自分の問題にもっとうまく対処できるようにならなくてはなりませんね、デイビッド。私もまったく同意見です。ですから君が危機の真っただ中にあるとき、君には私のスキル指導が必要なのです。それをこのように考えてみてはどうでしょう。例えば私はオーケストラの指揮者で、君はオーケストラの演奏者。指揮者と演奏者は演奏会のリハーサルのために定期的に会います――それが私たちのセッションです。演奏会は現実生活、つまりこの診察室の外で起こることです。どうでしょう、君は指揮者が練習には来るけど本番には来ないということを想像できますか?」

私は説明しました。

「別に私も真夜中に起こされるのが大好きというわけではないですよ、しかし君のセラピストとして役に立たないくらいなら、真夜中だろうと相談を受ける方がずっと良いのです」

「わかりました。そうやって説明してもらえると、先生のお考えがわかります」

デイビッドは答えました。



電話によるスキル指導は、初めは子どもたちにとって理解しがたいことがあります。しかしスキルを子どもたちが試した後、それでも自傷したいという強い衝動が彼らを圧倒したときには電話によるスキル指導によって適切な援助を提供できるのです。

次にあげるステファニーの話はそのよい例です。


次回は「ステファニー:電話によるスキル指導」を紹介します。


「自傷行為救出ガイドブック ―弁証法的行動療法に基づく援助―」 マイケル・ホランダー著


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