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何をしたらよいのか、それはなぜか




  自傷する子どもを持つことは、とりわけ困難なチャレンジです。皆さんはわが子が精神的にもがき苦しんでいることに痛いほど気づき、子どもの行動が彼ら自身の身体、彼らが幼かったころからずっと皆さんが懸命に守ろうとしてきた身体を攻撃していることもわかっているでしょう。メアリーの母親のようにしばしば皆さんは、欲求不満に駆られ、イライラし、どうすることもできない憤りに悩まされている自分に気づきます。あるいは、あまりに遠慮しすぎてかえって子どもの役に立てず、無力になってしまうのです。


親としては、今の状況を悪化させず、次からはもっとうまく対処する方法が見つかるよう願うことしかできない場合があります。感情的に脆弱で、自傷している子どもを育てているときには、標準的な子育てスキルにいっそうの磨きをかけ、さらに新しいスキルを学ぶことが必要となります。たとえばこれらの子どもたちにとって、承認は、他の子どもたちが必要とする以上に重要なものです。


  新たな子育てのスキルの習得にあたって心に留めておくべき重要なことは、新しい行動を学ぶのは大きな船を方向転換するようなものだということです。そのためには練習と辛抱、そして忍耐が必要です。てっとり早くできる方法などないのです。心理学者はこのプロセスを「行動形成(シェイピング)」と呼びます。連続してアプローチや試行を繰り返すことで、望まれる行動やスキルを獲得するのです。そのために、皆さんの行動が完璧ではなくても、正しい方向へと進みつつあるときに、皆さんの子どもと皆さん自身の努力を意識して褒めてあげてください。


皆さんと子どものどちらかが進歩したときには、皆さんと子どもの両方を褒めます。そうすることでその行動は強化されます。つまり、その新しいスキル行動が再び生じる可能性が高まるということです。ではここで、シェイピングの意図するところを、例を挙げてみてみましょう。


大きくなった14歳のメアリーが、しかめっ面で帰宅します。瞳からは涙があふれ、唇がかすかに震えています。

「メアリー」

あなたは呼びかけます。

「どうしたの?」

「何でもないわよ!」

彼女は怒ってあなたに食ってかかります。

「わかったわ、でもあなたの中できっと何かあったのね。そしてあなたを困らせているのでしょう」

あなたは、いくらか心の平静を保って答えます(承認)。

「ジェイミーは最悪よ!あんな子、大っ嫌いだわ!」

メアリーは声をあげながらあなたに言います。

「まあ、ジェイミーは本当にあなたを困らせて、あなたの気持ちを傷つけてしまったのね」

あなたは答えます(承認)。

「そうよ!今は私、本当に一人になりたいの」

メアリーは自分の部屋へと階段に向かいながら怒鳴ります。

「きっと何か、私が力になれると思うわ」

あなたは言います(求められていない問題解決)。

「誰も私の力になんかなれないわ。ただ一人にしといてちょうだい」

メアリーは階段を半ば上りかけてあなたに言います。


ここで、メアリーの母親はこの状況に対して、先に示した例よりもずっと効果的な対応をしています。しかし、それでもまだ、メアリーを感情的苦悩から救い上げるには力不足です。この対話のポイントを挙げてみましょう。第一に、母親はわが子の感情的苦悩に直面しても比較的冷静な態度を維持することで、その状況がエスカレートする可能性を低めることができました。第二に、彼女が承認するスキルを用いたことはメアリーが会話を続けるのに役立ったようです。これらの新しいスキル行動は両方とも、メアリーの母親が正しい方向へ向かいつつあることを具体的に示しています。第三に、彼女は、メアリーに何か助けを求めているかどうかを尋ねることなく問題解決を提供してしまったために、ちょっと失敗してしまいました。しかしながら第四に、最も重要な点があります。それは、人は何をしようとも自分の求める結果を得られないこともあるということ、しかしその行動は次からはもっと目標に近づくということです。メアリーの母親は、娘が感情的に苦しんでいるときにより力になれるよう、自分の行動をシェイピングしているのです。


新しいスキルを学習しているときには、次の三つのPを心に留めておくとよいでしょう。それは、練習(Practice)、辛抱(Patience)、そして忍耐(Perseverance)です。これらは、子どもを助けるための重要なカギを握っています。



次回は「練習(Practice)」をご紹介します。


「自傷行為 救出ガイドブック ―弁証法的行動療法に基づく援助―」マイケル・ホランダー著

 
 
 

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